エンプロイメント・ブリッジ: 前例のない課題を抱えた時代に立ち向かうために設計されたワークフォース・プランニング

景気が下降するさなか、ワークフォース・プランニングに関していくつかの予測を立てていましたが、新型コロナウイルスの世界的大流行により、いろいろな意味でそれらの予測は一変しました。 従来とは異なる課題に立ち向かう今、人材サービス業界は従来どおりの解決策を提供するだけでは充分ではありません。

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それは、世界の労働市場においてこれまで目の当りにしてきたなかで、最も切実なワークフォース・プランニングの課題のひとつです。 新型コロナウイルス感染症拡大によって失業者が激増している一方で、これまでになかったような新しい仕事が大量に生まれています。

航空産業では今だ低迷が続いていますが、オンラインの小売業者はこれまでになく急増した注文の対応に追われています。 ホテルやレストランやバーなどは大きな打撃を受けていますが、個人用防護具や手の除菌用ローションのような幅広い製品の製造業は急速に発展しています。 観光産業の雇用は大幅に減少しましたが、警護や医療などの分野における雇用は着実に増加しています。

私はこんな問いを自問し続けてきました。人材サービス業界は、変化と危機の際に企業が頼りにする存在になることができているだろうか?この前例のない労働市場の現状に対応するために必要とされる革新的な解決策を充分に提供しているだろうか?と。 1つ確かなことがあります。 それは、従来の解決策では充分ではないということです。

再就職支援のような選択肢は、労働市場の変化において常に重要な要素となります。 諸外国が安全な出入国の再開に向けて動き出し、企業が新型コロナウイルス感染症に対応したビジネスモデルを発展させている現在でも、再就職支援は企業が失業者を支援しながら、ブランドを守っていくうえで極めて重要な役割を担うことになります。 しかし、現在の特異な労働市場の状況を考えると、労働者と企業がこの危機を乗り越える助けとなる、より有意義な方法を考え出す必要があります。

LHHは、一時的な人員削減を必要とする企業と緊急の人員確保を必要とする企業の間を、秩序を保って安全に取り持つための新しい方法を探るまたとない機会だと考えました。 プロジェクトを始めた時点で確実にわかっていたのは、労働力の需要と供給を一致させる初期の試みは、必ずしも良い結果を伴わなかったということです。

3月、ドラッグストアをチェーン展開する世界有数のヘルスケア会社であるCVSヘルスは、パンデミックが一因となって生じた取引の急増に対応するために、5万人を新規に採用する必要があると発表しました。 この新規雇用を確保するために、CVSヘルスはGap、デルタ航空、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスなどの企業に働きかけました。というのも、それらのどの企業も世界中で何十万人もの従業員を解雇または一時解雇しなければならない状況にあったからです。

これにより、CVSヘルスはかなりよい評判を得ましたが、予想外の結果も伴いました。 こうした評判が広がったことも手伝ってか、5万人の求人に対して90万を越える経歴書が届いたのです。 迅速な対応が求められる状況で、かなり大きな課題が人事部にもたらされました。

これを解決するために必要だったのは、従業員の移動をより計画的で管理された方法にまとめることでした。 そこで生まれた解決策が「エンプロイメント・ブリッジ」です。

概念的に説明すれば、エンプロイメント・ブリッジとは、ある企業の余剰人員を別の企業の臨時的な雇用に当て、元の雇用主は事業が回復したらその従業員を呼び戻せる仕組みのことです。 単純明快な考えですが、その実施はかなり複雑になる可能性がありました。

人員削減のための法的請求は国によって異なるからです。 ある地域では、従業員の解雇や一時解雇は比較的簡単に行えます。しかし、別の地域、特にヨーロッパでは何層にも重なる法的手続きにより、解雇や一時解雇は複雑になっています。 エンプロイメント・ブリッジを実現するためには、従業員本人、会社、政府、労働組合というすべての関係者が支援できる従業員の移転方法を見つけなければなりません。

アデコグループのIT、エンジニアリング、ライフ&サイエンス領域のグローバルな人材派遣とソリューション提供サービスであるModisが解決策の一部を見つけました。 協力して考案したのは、余剰人員のある企業が雇用契約を解消するのではなく、事実上契約を一時停止にして、その余剰人員をModisに「貸し出す」ことのできる仕組みです。 そしてModisは、人員の増員を必要としている企業にこれらの従業員を派遣するのです。

関係者全員に利益をもたらすシンプルですばらしい解決策であり、 この理論の実現もあっという間でした。

ヨーロッパの2つの大企業でパイロットプロジェクトを実行したところですが、 最終的には6,000人の従業員がエンプロイメント・ブリッジの橋を渡って移動することになるでしょう。

なぜこんなにも迅速に理論を実現できたのでしょうか? エンプロイメント・ブリッジの条件を簡単に確認するだけでも、各従業員や従業員を貸し出す企業にとってさまざまな利点があることがわかります。

まず企業はさらなる解雇手当を負担することなく人件費を削減できます。 最近は多くの企業が事業収益の急激な減少に直面しているので、従業員と事業が痛手を受けることなく、非常に費用対効果のよい人員削減ができることは重要です。

エンプロイメント・ブリッジは、事業が回復した時に従業員を元の企業に呼び戻せる権利も用意しています。 重要な人材の確保は大きな利点であり、パンデミックにより特に大きな打撃を受けた企業にとって、できるだけ早く費用対効果のよい形で通常の経営に復帰する絶好の機会となります。

個々の従業員もエンプロイメント・ブリッジからさまざまな利益を得られます。

他の企業で働くことで、結果的に新しい経験とスキルを得る機会が得られ、 貸し出し先企業との契約条件に従って、同等の賃金と手当てを受け取れることが保証されています。

景気が下降するさなか、ワークフォース・プランニングに関していくつかの予測を立てていましたが、新型コロナウイルスの世界的大流行により、いろいろな意味でそれらの予測は一変しました。 従来とは異なる課題に立ち向かう今、人材サービス業界は従来どおりの解決策を提供するだけでは充分ではありません。

エンプロイメント・ブリッジは、前例のない新たな課題に対する新しい解決策です。

 

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