企業のレジリエンスのバッテリーが空では? 回復の5つのステップ

レジリエンスはバッテリーに似ています。つまりフル充電を維持するためには、正しく整備し、定期的に充電する必要があります。 バッテリーを過酷に使用し、望ましくない環境で長時間使いすぎると、最後にはバッテリーを使い果たしてパワーが失われます。

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新型コロナウイルスが世界的に大流行するなかで私たちが学んだことのうち、最も厳しい教訓は、私たちは複数のパンデミックを相手に闘っているのかもしれないということです。 コロナウイルスとともに、世界は深刻なレジリエンス不足に見舞われています。

新型コロナウイルスの感染拡大とともに、世界は感情的および精神的疲弊というパンデミックにも苦しんでいます。心身の健康問題が世界中で起こり、そこには自殺の急増も含まれています。 憂慮すべきは、このようなストレスに対して最もレジリエンスが高いと思われていた人が、最も苦しんでいるということです。

とりわけ医師や看護師はパンデミックによる容赦ないストレスに耐えようと必死に戦っています。 9月に60カ国にわたり数千人の医療従事者を対象に行われた調査では、半数以上の人が新型コロナウイルスの世界的な大流行への対応でかなり精神的な疲労が見えると報告しています。 このような結果を受けて、世界保健機関(WHO)は、特に新型コロナウイルス感染症が秋に急激に拡大する恐れがあったことから、医療従事者のメンタルヘルスを注意深く観察し続けるよう各保健当局に向けて指令を発しました。

あるレベルで見ると、なぜ医療従事者が最も影響を受けるのかはよくわかります。医療従事者は文字どおり新型コロナウイルスの感染拡大を押しとどめようとする瀬戸際で働いているのです。 しかしまた一方で、彼らはレジリエンスの「スーパーヒーロー」になるべく、相当の教育と訓練を受けてきています。

世界中の医療従事者の間で精神的な燃え尽きが広がっていることで、レジリエンスについての大きな誤解が明らかになっています。 つまり、最も頑強な人であっても、レジリエンスは無尽蔵ではないということです。

 

レジリエンスは現代のビジネスで最も求められる力

 

ビジネスの世界では、レジリエンスはリーダーとリーダーが率いる人々の両方に強く求められる力です。 レジリエンスは、臨機応変であったりストレスの多い出来事からすぐに回復できたりする従業員をひとまとめに称する表現として使われがちです。

レジリエンスは心の知能指数やアジャイル思考と密接に関連しているので、リーダーシップの重要な資質であると考えられています。 これら2つのリーダーシップの中心的な理念の基になっているのは、自立していたり、決断力があったり、模範を示して指導できる人たちです。 これらはビジネスにおけるレジリエンスを定義する際にあげられる性質です。

しかしながら、ビジネスにおけるレジリエンスを研究するリーダーシップ育成の専門家たちは、レジリエンスが恐らくもっと微小なさまざまな形で現れていることに気づきました。 率直さ、臨機応変さ、献身さ、謙虚さ、共感などの性質は心の知能指数やアジャイル思考と密接に関連しており、今ではレジリエンスが高いリーダーの基本的な性質であると考えられています。

しかし、これらの議論では、実はレジリエンスを消耗させている力のことは話されていません。

 

レジリエンスのバッテリー

 

多くの企業は、リーダーや従業員のレジリエンスについて考える時、いつも同じことを自問しがちです。 つまりレジリエンスがあるのは誰で、どうすればそのレジリエンスを高められるのかという問いです。 さらには、トレーニングによってレジリエンスを高められるのか、あるいはレジリエンスがある人物を外部の人材プールから採用したら良いのか知りたがります。

しかし、レジリエンスを考える時に文化や職場環境のことを考慮する企業はほとんどありません。 よく見落とされることですが、有害なリーダーのいる有害な職場では、最も強く有能な人のレジリエンスですら消耗してしまいます。

レジリエンスはバッテリーに似ています。つまりフル充電を維持するためには、正しく整備し、定期的に充電する必要があります。 バッテリーを過酷で望ましくない環境で長時間使いすぎると、最後にはバッテリーを使い果たして、パワーが失われます。 レジリエンスは育成、トレーニング、休息、健康的な訓練などで回復できます。

良い例としては、私たちが扱った医療従事者の事例を見ることができます。 現在世界的に広がっている心身の健康の悪化というパンデミックの原因は、新型コロナウイルスにあると言うのは簡単でしょう。 しかし実際は、医療従事者の心の健康は何年も前から懸念されていました。

世界的な医療情報サイトであるMedscapeが毎年行っている調査の結果が1月に発表されました。この「2020年全国の医師の燃え尽き症候群と自殺に関するレポート」によると、回答があったアメリカ国内の医師の42%が「長時間の重労働と(雇用主からの)サポート不足」から燃え尽きを感じていました。 新型コロナウイルスが広がる前のアメリカの医療従事者を対象としたこの調査では、回答者の4分の1が自殺を考えたことがあることもわかりました。 レポートには、前年の調査で毎年300~400人のアメリカ人医師が自殺していることが判明したと記載されています。

特に医療従事者のレジリエンスはストレスの多い職場環境によって蝕まれやすいですが、同じようなことは産業や分野や職業にかかわらず、どの職場でも見られます。 従業員のレジリエンスを高め、維持したいと考える企業にとって、できるだけ早く全体を診断し、改善策を導入することが不可欠です。

 

レジリエンスの消耗の初期兆候と対処法

 

まず、企業のレジリエンスのバッテリーが消耗しているかどうか判断します。 良い知らせとしては、現在の多くの心理測定評価は個人と企業のレジリエンスを比較的正確に評価できるということです。 これらの評価はキャリアに影響のある機会に使うことができます。 例えば、入社時研修、昇進、リーダーシップの機会、異動や海外駐在、重要プロジェクトへのアサイン時などです。

しかしながら、もっと継続的な面で言うと、従業員のレジリエンスのバッテリーを再充電するために企業がすぐさま取り組むべきことがいくつかあります。

1.    フィードバックを得る。 つまり、人に大丈夫かどうか尋ねなければ問題があるのかがわかりません。エンゲージメント調査は、レジリエンスの不足にとって重要な早期警戒システムです。 しかしこの他にも、特に従業員グループの個人のレジリエンスを測定できるコナー・デビッドソンレジリエンス・スケールのような心理測定法があります。

2.    レジリエンスの消耗の初期兆候に気をつける。 精神的に安全ではない職場は、たいてい高確率で離職、長期欠勤、病欠の多い職場です。 これらを考え合わせると、従業員のレジリエンスを消耗させているのは普段の基本的な職場環境であることがわかります。

3.    頑張りすぎる従業員を注意深く見守る。 従業員がいつも有給休暇を先延ばしにし、夜や週末や祝日に仕事のメールに返信していませんか? これらは、従業員がいつかレジリエンスのバッテリーを消耗させてしまう明らかな兆候となります。 業績優秀な社員でさえ、ワークライフバランスを無視してレジリエンスを維持することはできません。

4.    精神的に安全で健全な職場を作る。 もともとレジリエンスが非常に高い人でも、職場のコミュニケーションが悪く、対立が存在し、政治的な駆け引きがまん延し、リーダーシップが弱く、ワークライフバランスが欠如していると、適応力や忍耐力、回復する力をそのうち失ってしまいます。

5.   リーダーシップに特に注意する。 広範囲にわたるエンゲージメント調査によると、従業員が退職する主な理由は不快で有害な上司やリーダーから逃れるためです。 社内のリーダーシップに目を光らせ、リーダーによって従業員が無視される、理不尽な仕事を要求される、あるいはセクシャルハラスメントや心理的虐待にさらされていないかを確かめる必要があります。

新しい従業員やリーダーを配置しただけでは、特に有害な文化を持つ企業のレジリエンスは改善できないということに注意しなければなりません。 非常に自信に満ちて有能な新しい従業員やリーダーでさえ、サポートのない職場に直面すると、いつかはレジリエンスのバッテリーを使い果たしてしまいます。


企業は時間をかけて文化、リーダー、従業員を評価することで、レジリエンスのスキルを伸ばし、維持するための方策を講じることができます。 レジリエンスが弱まっている兆しが見られたら、実用的なツールを用いてレジリエンスを必要とする人のレジリエンスを高め、パンデミックが始まった頃にレジリエンスのバッテリーを使い果たしてしまった人のレジリエンスを回復させることが不可欠です。

 

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