転職しないリスクは転職するリスクよりも大きい

たとえ今の会社に不満があり、キャリアアップのためには「転職が必要」と思っていても、職場を変えることのリスクを考えて、転職に踏み切れない人もいます。新しい職場での人間関係や自分の能力ではたしてやっていけるのか? という不安もつきまといます。
ましてや提示された給与や条件が、今より悪かったらなおさらです。しかし、リスクを避けるために諦めてしまったばかりに、のちの転職に大きな障壁を作ってしまう可能性もあるのです。
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会社の業績悪化に伴い、転職に挑戦するものの…
特定派遣型のSIerでソフトウェアエンジニアとして働く、Aさん(35歳)の例をご紹介しましょう。
Aさんの会社は、主に詳細設計より後の下流工程を専門に請け負っており、Aさん自身も客先の企業に常駐して開発から運用、サポート、監視に至るまでのあらゆる作業を担当してきました。
実はAさん、5年前(30歳の頃)に、一度転職を考えたことがありました。その時は、大手SIerから内定をもらったものの、給与面で折り合わなかったため最終的な転職には至らなかったのです。
Aさん (35歳)
ソフトウェアエンジニア
それから5年、リーマンショックにより会社の業績も大幅に悪化。会社で待機を命じられることが多くなり昇給もストップするなど、将来に危機感を覚えるようになります。
すでに、35歳になっていたAさんは、改めて以前からの希望だった上流工程への挑戦を改めて意識するようになりました。同時期に、派遣先で知り合った友人のエンジニアが大手SIerへの転職を成功させたことも刺激となり、さっそく転職活動を開始します。
しかし、40社以上に出した応募はことごとく書類選考で落選。ようやく2社で面接にこぎ着けることができたものの、提示された条件は現在の仕事と比較して、内容でも給与面でも大幅に劣るものでした。
年齢とともに、求められるスキルも上がる
エンジニアとして15年間働いてきた実績に自信があっただけに、大きなショックを受けたAさん。ですが、このようなケースは決して珍しくありません。ほとんどの場合、転職の決断が遅すぎたことに原因があります。
年齢が上がると、当然のことながら転職の際に企業側から求められるスキルも、さらに高いものとなります。35歳ともなれば、通常ならばマネージャーとして複数の部下を率いる立場ですから、エンジニアとしてのスキルに加えて、予算や工程の管理に関する経験と能力が求められるでしょう。加えて、管理職であるマネージャーは、募集の枠そのものが限られています。
年齢が高いほど転職が難しいと言われる理由は、よく誤解されているように能力が衰えるからではなく、要求のハードルが上がるためなのです。
ところがAさんの場合、小規模なプロジェクトのリーダーとしての経験はあっても、マネージャーとしての実績はありませんでした。
また、以前に大手SIerから内定をもらったという自負や友人との競争意識から、自分のスキルと見合わない高い条件を追及しすぎたことも、マイナス要因となってしまいました。
ただし、同じ内容の仕事を続けてきたために30歳の時点からキャリアアップできなかったAさんと、企業側が求める能力の間に、5年で大きな差ができてしまったことが決定的だったといえるでしょう。
会社に留まったことで、キャリアアップの機会を失った
ではAさんの場合、どうすべきだったのでしょう?
5年前に大手SIerからオファーをもらった際、Aさんはその当時で500万円だった年収が450万円に下がってしまうことや、それまで経験したことがない業務を求められた不安から、現在の会社に留まることを選択してしまいました。
転職のリスクを恐れるあまり、「転職しないで済むための理由探し」をしてしまったわけです。
たしかに、転職したからといって必ずしも成功する保証はありません。しかし上流工程へのキャリアパスが開けた新しい会社で頑張っていれば、マネージャーとしての経験を積める可能性もあったはず。
エンジニアとして一線に留まっているためには、自分の価値を高めキャリアに足りないものを補うことが欠かせません。そのために何をすれば良いのか、常に考えておく必要があることは言うまでもないでしょう。
たとえ給料が下がっても、将来的な可能性の見える会社に転職することが、キャリア形成のうえで重要な選択肢となる場合があるのです。また今の会社に満足していたとしても、将来のリスクとなり得る問題点がないかどうか、意識しておくべきでしょう。
問題の先送りが転職失敗につながった
「5年前に転職していれば、あるいは違う未来が開けていたかもしれない…」と思っても、30歳の頃に戻れるわけではありません。
厳しい言い方かもしれませんが、Aさんが行ったのは、ただ問題を先送りしたことに過ぎません。キャリア形成を軽視したツケはいずれ必ず表面化しますし、切羽詰まってからの転職はすでに手遅れの場合が多く、往々にして上手くいかないものです。
つまりこれこそが、「転職をしないことのリスク」の正体なのです。逆に、冒頭で述べたような転職に伴うリスクに関しては、人材紹介会社によるコンサルティングや情報分析を上手く利用ことで、より少なくすることができます。
1.転職にはリスクを伴う。ただし転職しないことが、より大きなリスクを招くことも
2.年収など目先の条件にとらわれず、5年先、10年先のキャリアを意識せよ
3.年齢と共に求められるマネジメント経験は買ってでも積もう
4.今の会社に満足していても、将来的にリスクがないか市場を見渡した判断を
5.自分の市場価値、良い条件で転職をするタイミングを知るために人材紹介会社を活用しよう
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